【感想】入居条件:隣に住んでる友人と必ず仲良くしてください

 


カクヨムで試し読みして一気に引き込まれて書籍購入。

読みやすい。全体的な雰囲気はラノベ。「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」を思い出しました。超絶ヤベェ奴と適度な距離と対応を淡々と熟せる主人公が一番ヤベェ、というやつ。

怪談を話してくるお隣の怪異(恐らく相当強くて危険な怪異)との交流を通して色々と人生ぐちゃぐちゃのドン底だった主人公タカヒロがゆっくり再生していくのが良い。
「タカヒロはいい子だから、クリスマスプレゼントもらえるよ」ってお隣の怪異に言われて、その言葉を心の大事なところに無意識に置こうとする主人公…!
クリスマスプレゼントも「いい子」なんて言葉も与えられたことが無かったんだろうなぁと切なくなった。

お隣や別の部屋や主人公の部屋にいる(!)怪異と主人公のやり取りが可愛らしいと感じることもちょくちょくある。
最初お隣さんの声は口調とかもあって女性イメージしてたけど「妙にいい声」で、イノヒラさんの依頼人(男性)から声を借りているということは…男の声、なんだろうな。
「初夢」の回で「おれは我慢してるのに」ってサラッと一人称出てたしなぁ。口調可愛いからダマされる。通常はフワフワっとした口調なんだけど所々でブレる(「じゃあダメだな」とか)のが不安定というか人間擬態の限界がある怪異って感じで好きです。

ほっこりする一方で怪異が語る怪談は普通に怖いし、怪異は結局怪異でしかなく分かり合えることは無いため気を許した途端バッドエンド・デッドエンドという緊張感。
「通じているように見えるだけで、会話ができるわけではない」という表現がされていたけどまさにそれなんだろうなぁ…。

あとホラーの定番「人の方が怖い」もちゃんと踏襲していて、主人公の母親がマーーージで怖い。
最低最悪最凶の毒母と、主人公が母親を心の底から厭いつつどこかで縋ってしまっている関係の解像度が異様に高くてもはや作者さんが怖い。
「産んで良かったって思いたいの」って悍ましい言葉だ……「産まなきゃ良かった」をストレートに表現して加害者として責められることを忌避するために子供に責任を擦りつけてる…その言葉に「自分を産んで良かったと思おうとしてくれてるんだ」と微かにどこかで喜んでしまう主人公もすっごく悲しい。
主人公の母親が無事スミエユナのもとに「リサイクル」されて良かった。良かったということにしておこう。

書き下ろしのお話は補完要素多くてありがたかったです。
怪異だけじゃなく神藤さんやイノヒラさんも大人として主人公(恐らく超猛毒母のせいで精神というか魂の根っこの部分の年齢が5-6歳辺りで止まってしまってる)を気にかけてるのがわかって少し安心。
ある意味主人公は素晴らしい適性のある「生贄」で行き着く先はほぼ決まっているんだろうけど、その道程を気遣ってやりたくなるくらいにはいい子なんだよね。

なんとなく続きそうというか、2部が既にカクヨムで連載中なので2巻期待できそう!
ずっと変わらず続いていきそうでもあり、怪異によってゆっくり回復していっている主人公の魂年齢?が上がっていって関係性が変わりそうでもあるので続きめっちゃ気になる!

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