【感想】ラストマイル



 やっと見た!

MIU404とアンナチュラル履修してから見るぞとしてたけど、ドラマ見てなくても映画楽しめたやつだなこれ!

とはいえやはり2作品視聴してた方が伏線とか暗喩をより楽しめて良かったです。

ドラマもだけど音楽全体的に好きだな~。

最初、エレナや派遣の人達の出社時BGMがオーケストラの準備音っぽいのから始まって合奏になり大きくなっていく→物語が始まるぞというのとブラックフライデーでの動きだし盛り上がりと連動してるのが印象的でした。


アンナチュラルでのコインを落とす音と、ラストマイルではベルトコンベアの「カタン、カタン」という音、作品のキーとしてこういう音を使ってるのもおもしろい。


エレナがめっちゃバイタリティあって「全部欲しい」って欲望バリバリで突き進む姿に、無気力現状維持派の今時っぽさ全開のコウが「羨ましい」と言うのもわかる…だった。

かといってエレナがつよつよバリキャリってわけでもなく(外側はそう見えるけど)、「全部欲しい」には「親にプレゼントを買ってもらえる子が羨ましかった」というのがあるし、ブラックな職場に精神を蝕まれて眠れず休業した時期もあったし、それでも笑って突き進んで見せる姿が良かったです。


ストーリーは社会派でもあるけどそれをバーン!と前面に押し出しすぎてないのが今風だなと感じました。

社会が悪い!!人間の欲望は愚か!!みたいなのを突きつけすぎない。肯定しつつも、このままでいいのかな?と考えさせるようにしてる。


考察の余地はいろいろあってもうたくさんされているだろうから個人的に印象に残ったものを書き出し



・FASTがFAUST(悪魔を呼び出した博士)になってるのオシャレ…だし、悪魔とは?=人間の欲望とそれを掻き立てるデリファスの「What do you want?」の問いかけ。メケメケフェレット!タロットで悪魔のカードは欲望に溺れる、だけど、絵柄的に人間は悪魔に拘束されているようで手は自由なことからその欲望は自分からコントロールして脱出できるというのも示唆しているのを思い出した。


・爆弾作った奴はほぼ語られてないけど、少ない語りと全体のストーリーから合理化していく社会に何かしらの躓きで付いていけなくなってドロップアウトし金もなく天涯孤独になり半分自棄になっている男であることが推察できるのが良かった。どこか諦めた感じだけど借金返済や親の葬儀代を出せるくらいの金を爆弾作成の対価として出した犯人に「いい子だったんだ。逃げ切って欲しい」と言ってるあたり、なんともいえない寂しいものを感じた。


・元はヒノモト電機という、高性能だけど高コストで価格競争に負けた電化製品会社の理事だった佐野息子が末端の配送業者見習いとして働き、ストーリー一番最後で爆弾を自社製品の高耐久ドラム式洗濯機にぶち込んで被害を最小限に抑えるという作り、無駄が無いのもあるけど佐野息子の人生が「無駄だったんじゃない」「間違ってない」と肯定してるのが良かったです。

佐野父に対して「(末端の配達員である)親父を大切にしてる人なんていないよ」ってのも刺さった。映画主題歌「がらくた」の歌詞とこういうとこもちゃんとリンクしてるんだな~


・エレナが五十嵐に向けた「あなたも私もみんな同じベルトの上にいる」は考えさせられる。山崎が己の命で止めようとして、それでも止まらなかったベルトコンベア。その上で五十嵐のように走ろうが、コウのように黙って載っていようがいずれ行きつく先はみんな同じ。せーので止めるか降りなければ変わらない。デリファス(某密林)だけじゃなく社会のシステムとそれに乗っかって生きてる現代の人間全体に言えることなんだろうなぁ。

自己責任論で片付けようとしてもそうはいなかによ、と忠告されてるみたいだった。


・マジックワード!これは世の中に沢山あるよね…使ってる内に使われている。言葉が先にあって人の気持ちがあるわけではない、人の気持ちがあって言葉が後である。本当はそうなんだけど、いつの間にか取って代わられる。「自己責任」も「あなたのために」も。


・最後の爆弾があったのが「404号室」=見つからない爆弾って意味らしくてほえ~~~~~!ロッカー番号13で不吉なアレかとは思ってたけど細かいな~



MIUとアンナチュラルからの出演はテンション上がりました。ラストマイルメインを食わないでしっかりお仕事してるのがいい塩梅。

クロスオーバー作品のネックになりそうなとこ(クロスオーバー先の世界観を食い荒らしてしまうほどにキャラが活躍してしまうなど)をしっかり把握して作られているんだなぁと感じました。

犯人の真実が明らかになって中堂が「見上げた根性だ」、ミコトが「そんな根性ならいらない」っていうのが、「らしい」なと。この短いセリフからしっかりキャラを感じさせる演出が本当に上手いですよね~

MIUコンビが相変わらずでホっとしちゃう。偽通報で騒ぎ起こしてた高校生の勝俣がMIUに入って陣馬さんとコンビ組んでたのが嬉しくなった。アンナチュラルの六郎とかもだけどここら辺のキャラに変化を持たせることで月日の経過を感じさせるのいいな


最後、エレナは少しだけどベルトコンベアを止めてみせた、ほんの少しかもしれないけど人を動かして制度を変えてみせた。

でも山崎は植物状態のままだし筧は連続爆弾事件を起こしながらもたった一人の犠牲者となり死んだ。

これだけの犠牲を払ってこれだけ?ってなりつつも、でも確かに変わった。

じゃあ次は?あなたはどうする?そのままベルトコンベアに載っていたらいずれまた同じとこにたどり着くだろう。どうする?

無数の「あなたは なにが ほしい ?」という問いかけと五十嵐やコウの表情でそれが示唆されてるっぽい。

見た後に希望を少しだけ持ちつつ若干ザラリとした不穏も残る、印象に残るよう計算されたラストだなと思いました。


おもしろかった!映画館で見ればよかったな~!

でも2作品履修した後だからMIU、アンナチュラルの「くるぞ!」って演出にウオオ!ってなれたし前半エレナの犯人ミスリードもなんとなくンン!?となっておもしろかったのでオーライオーライ。


これでMIU404、アンナチュラル、ラストマイル全履修完了しました。

どの作品も見だすと全部おもしろくてスイスイ視聴できるのが印象的でした。

あと、主人公に据えられるキャラ達の造詣が本当に上手くて魅力的なのも。

ミコト、志摩&伊吹、エレナ…重いもの背負ってるけど表向きは飄々と前を向いて今を生きてる(志摩は伊吹に出合って元相棒の事件解決するまでは自分の命軽視してたけど) 共通して、最初は冷たいとか割り切ってる強いキャラなんかなとか思うけど、抱えた傷を蔑ろにすることなく優しく強くありたいと思ってるキャラなんだなーと理解するうちに応援したくなる描き方で感心してしまう。


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