見てきました。
いやーーーーーーーーーーーもうネットやSNSで酷評されまくってるのでアレなんですけど、虚無でした。
復讐者、男女バディ、ハムレット下地、愛を知る、夢の世界(異世界)…色々とそそられる要素あり、普遍的で王道な「なぜ生きるのか」「争い連鎖を断ち切るには」というテーマ
なのに!!
なんでこうなっちゃった????
4年もかけてなんでこうなっちゃった????????
という気持ちが強かったです。
※以下ネタバレ感想というか文句というか…です。
例えば、私は復讐者って設定大好きなんですけど、
「復讐者」を主人公に置くとしたら地雷にしかならない設定をバラ撒いてるのマゾか?!となりました。
・復讐心に振り切れないのに復讐復讐!と言ってる主人公(序盤と終盤で2回もクローディアス王の暗殺を躊躇って危機に陥る)
・亡くなった父王が最後らへん謎にホログラム蘇生して「復讐はやめるんだ」とか言ってくる(父王はすでに虚無なったって冒頭の説明どこいった)
・デウスマキナ的ドラゴンがブッパした雷により丸焦げクローディアス王は虚無へ…(スカーレットは手を一切汚さず復讐完了みたいな形に…)
スカーレットが復讐心に振り切れないのは自分の中に生きる父王の「話合い、和平をもって相対する」という精神性を否定することになるから~とかで説明できそうなんですがそういうのは無いんですよね…作中やたら言葉セリフで長々説明するとこはあるのに…説明するとこそこじゃないだろ的な…
復讐のキッカケになった父王がホログラムでひょっこり蘇って「復讐なんて愚かなことしないで」って言いだすのは復讐譚における最大の禁じ手じゃないか…?とすら思いました。
父である以上そう言うのはわかるし肯定するわけがないんだけど、その言葉は父王を亡くしてからのスカーレットの人生、父王への気持ちを否定することでもあるんだよ。それわかってないの?
たとえスカーレットが本当は復讐なんかしたくないという気持ちがあったとしても、あったからこそ、それってすごい残酷な言葉では?
少なくともほほ笑んで言うもんじゃないと思う。愛娘のここに至るまでの歩みを、復讐という重い選択を、間違っていると指摘してるんだぞ正論であってもドぎついことしてる自覚持ってくれ。
てか父王の最期の言葉「許せ」の意味を聖や敵交えて議論するところマジでいらんやろ!スカーレットが自分を許すことだと気づくだけで十分すぎん??
説明しすぎてる上に更にホログラムによる「それが正解やで★」って後押し余計すぎる。
これは個人的な好みの話ですが。
復讐譚において、復讐のキッカケになる人物ってのは「装置」なんだよな…復讐者当人にとっても、キッカケになった人物に直接問いかけたら「復讐はダメ望んでない」なんて言われるの当たり前とわかってて、でもそれじゃ私の気持ちが収まんねーんだYO!と決意するので、もうキッカケになる人の本当の意志なんて復讐者当人の中にすら無いんですよ…復讐を選んだ時点でキッカケになった人物との絆を否定し永遠に決別することになる、その孤独な決意が好きなんです。
その孤独に耐えられず復讐するかどうするか煮え切らずに葛藤するような復讐者も好きなんです。
…スカーレットはそれら全部無かったこと扱いになる設定発動させてるのである意味感服しました。
ドラゴンは自然現象、理不尽な天災なのかと思ってたけど描写的にあまりにご都合(スカーレットの危機に現れて雷落としていく)かつ鳥の群れがその正体だったの見るに天罰的なものなのか? ※鳥=死者の魂を運ぶ天の遣いの側面があるため。
スカーレットが復讐という手段を取らずともクローディアス王にはいずれ罰が下るのだ!だから復讐は必要ないのだ!ってことなのか?
…現実はそうじゃないから争いと復讐(報復)があるんだってばよ!!!????と思わずにはいられんかった。
「復讐者」ってとこだけでこれだけツッコミが出まくってしまう…
聖に関しては、もう、なんなんだよお前!で…
復讐に駆られる武闘派美少女に対して非戦闘員で看護師という「人命を助ける」信念の職業についてる男性という組み合わせ自体は「今までの細田監督的男女の役割分担からの解放だぜ」的なのを感じたんだけどマジで表面だけだった。
上記の通りスカーレットは復讐心に振り切れてない上に聖の説得力がまるでない「争い良くない」「戦い辞めるんだ」「殺すな」キツい。
きれいごとはいい。丸腰でなんか上から主張もいい。結果足手まといしてるのもまあいい。
古にいた、オタクから散々ヘイトを集めた「争いはやめてっ!」と言うだけの非戦闘後方お祈り美少女ムーブには独特の味があるものだから…。
だけど、こういうキャラには視聴者からいかにヘイトを貯めないかのフォローが必須、そして上記の通りサブカルの歴史の中でこの手のキャラのフォロー方法もある程度確立されてるとこあるのに、聖にはそれが無い。本当に無い。
視聴者の「ムカつくけど、きれいごとだけど、一理あるよな」という納得が無いまま聖はスカーレットと愛を育んでスカーレットを襲撃してきた敵を殺しちゃう。2人も。
そこで思い出してるのが「無敵の人化した通り魔(男)から子供たちを庇って死んだ」という生前の出来事なのも怖い。
襲ってくる敵と通り魔を被らせる意味何…通り魔をこうやって殺し返せばよかった、って解釈になりそうなんだけども…。
あれだけ殺すなって言ってスカーレット危ない目に合わせたりしたのに、いざその信念曲げて殺しても特に葛藤とか無さそうなのが怖い。建前でいいから葛藤してないとサイコ野郎に見えないかこれ。
とにかく背景もわからない。
設定的には視聴者寄りで、謎の異世界を視聴者に説明できるポジなのにその役割は無し。
突然のアーチャー適性に騎乗スキルA出してくるのほんと何…だし(弓道部だったんだ流鏑馬もやってたんだとかバチクソとってつけでも一言あればそうなんだってなるのに。)(それかこの謎の死の国は夢みたいなものだからそうあれと強く願えば非戦闘員でも戦えるようになる的なのとか…)
看護師目指した理由が「ボロ雑巾みたいに働いてる看護師を見て俺もなってみよう思った」というのも?????だった。
言葉選びが良くないだけってしたいのか?真意としては「命を救う大事な職業なのに人手が足りていない、自分がその職に就いて微力でも助けたい」なのかなって思うけど、相当好意的に想像力を膨らませないと難しい。
看護師だから命は救うもの!奪うものじゃない!って思想なら看護師になった背景理由は重要だし途中で敵を殺す展開もいらんかった。
「俺は死んでない!帰る!…帰り道だっちだ??」とか謎にポジティブで、言葉よりも行動!ってタイプみたいなのに、行動も言葉も伴わないノンデリ野郎に見えてしまう。
「いい奴だけど有害」みたいな物語としては大分ノイズになる存在…メインキャラなのに。
話題の「渋谷で突然のダンス」は、演出的にはよくあるものなのにあれだけ話から浮きまくるの逆にすごいな…となりました。
他もそうだけどテーマも表現自体も決して珍しくないんですよ…だから先人たちによる「どうやってメインストーリーに馴染ませるか」、「聴衆に納得いかせるように落とし込むか」ってノウハウだってある程度確立されてるのに、それらの工夫が全く感じられないというのにこころの底からびっくりした…。
「神様には人間の言葉は届かないから踊りで表現するんだ~」っていうのが
渋谷の唐突ダンスに通じてるはずなんだけど、(時代も文化文明も違う人間たちが分かり合えるのは難しく、理想としての相互理解表現=言葉を介さない踊り、となる)(平和の表現においては非言語コミュニケーション最強説)
非言語表現という直感、人類の共通認識の肯定的な面を視聴者側がこうして理屈こね回して解釈しようとしてる時点で失敗なんだよな…
せめて周りで踊ってるモブたちをキャラバンの人達にするとか、、、できたでしょ…
個人的にオイオイすぎて笑ってしまったのが最後、スカーレットの即位式演説。
さすがにオーディエンス(民)多すぎない!?!?
あと中世の王政時代で即位した女王に「本当に戦争なくなるんですかぁ?」とか聞いてくる民…お、お前なんやねん!?知事の演説会ちゃうぞ!?
「あなたをリーダーとして認めます」とかいう民のセリフ、歴史詳しくない私ですらハア!?だった。女王やぞ!?
スカーレットの演説内容についてはノーコメントというかほぼ覚えてない…薄すぎる…隣国には兵士送るの辞めます話合いをして戦争はしません、子供は絶対死なせません、とか言ってたけど、具体的なことは言ってなかった。
政治アニメじゃないから具体策とか予算の話免除されてもいい、だけど、死者の国を旅して愛を知って復讐心を手放して辿り着いたのがそこなんか?ってなった。
いや、本来は妥当なはずなんだけどこの作品はまず旅の過程が雑すぎるし、今回の旅で得たものはスカーレットという個人の価値観の変化なわけで、女王スカーレットとして国の在り方を示すには至らないのよな…スカーレットという一少女の体験と変化を一国の女王としての決意に結び付けるのが制作陣のお仕事なわけだけど…うん……ぜーんぜん機能してないので頭お花畑みたいな女王になっちゃってるなというのが正直な感想。
全体的に、説明しなくていいとこを長々セリフと尺使って説明し、説明が欲しい所には何も無いの繰り返しでなかなかに疲れる作品でした。
テーマと流れは
多様性
多様性から生じる争い
争いから生まれる復讐
それを断ち切るのは「愛」、「許すこと」
間違って拗れて争うけど、同じくらい、わかり合いたくて手を取り合って愛を育む、それが人間。
めっちゃあるある。今時。そして簡潔。
なのになぜこんなにも伝わってこないんだろう。
作中に「神様には言葉が通じないから踊るんだ」ってあるけど、この作品は伝えたいことはあってもそれを伝えようとする努力してます…?と感じました
しかもこっちは神様じゃなくて人間だし。
一点でもいい、どれかを深く突き詰めて煮詰めてそこから上記の展開はできなかったんだろうか。
怒り交じりの批判も多いと聞くけど、気持ちはわかる。
キャラも復讐も多様性も争いも愛も許しも全部、ちゃんと考えたことある?って聞きたくなるような薄さだったから。
随所から安全地帯の上から目線の他人事な薄っぺらさを感じるので、テーマ自体のフックが多くどれも重い分、視聴者の「真面目にやれよ」的な地雷にも引っかかりやすいんだと思う。
久々に「どうすればよかったんだろう」とか「120分程度の作品で異世界の世界観を視聴者に伝えるってマジ大変なんだな」とか考えさせられました。
知名度に対して興行収入、評価共々結構絶望的な感じになりそうな気配してるんだが大丈夫なんだろうか…監督生命が心配になる作品ってそんな無いよな…ある意味衝撃的でした。

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