【感想】岸辺露伴は動かない 懺悔室


 

前作おもしろかったので見てきました!


チラっと感想検索したら「日本人キャストばかりで違和感」と結構あったから大丈夫かな~と思ったけど見たら個人的には違和感感じなかったかな。

みんな要所要所でイタリア語話してるし。


どちらかと言うと人が全くいないヴェネツィアの方が…w(前に行った時の人混みすごかったから余計に)

人払いにどれだけかかったんだろ…とか思っちゃった。


ストーリーは「最高の幸福を感じた時、最大の不幸が訪れる」という呪いをかけられた男の話。

呪いとしては定番だけど全体の雰囲気や撮り方、役者さんの演じ方がとても良くて見てて不気味で不安な気持ちになった。

グロはほぼ直接描写無いのにイテテテ…ってなるよ!


呪いの発端になったアレソレ、身につまされるというか現代ではそう珍しくない風景をSNSとかで見てるから普通に怖かった。

明らかに自分より困窮していて助けを求めてくる人を見て「自分は助けてもらえず理不尽な環境にも歯を食いしばってこんなに頑張ってるのに、

こいつは求めれば助けてもらえると思ってる。そんなの怠けだ!腹が立つ!」ってなるの、うあーーーーー!!!ってなった。


そういうの今の世の中(特に福祉関係の世界)にはめちゃくちゃ溢れてるし自分だっていつそうなるかわからんと恐怖してるからあれはめちゃくちゃ怖かった。


加えて、外国人だからと過酷な仕事を押し付けられた後に、同じ日本人なんだから助けてくれ、と言われたら…。にこやかに助けること、できるかな?


人として正しくない醜悪だとわかるけど、自分も同じ状況ならそうしてしまうかもと僅かにでも思ってしまう。

理不尽ポップコーンバトルでそんなの逆恨みだ!いやこの恨みは正当だ!とやり取りがあったけどあれも不毛すぎて…削られまくってもうカケラしか残ってないような自尊心だからこそそれ守るために死に物狂いで相手の方を否定してるっぽいのが……

最下層同士で足の引っ張り合いと俺の方が正しい被害者するのがリアルすぎる。

あ、でも詐欺師が怨霊に加わるのはなんか違くない?!とはなった。そこは詐欺師として上手い話には裏があると割り切るもんだろ……と。

そもそもあれは呪いではなくスタンドなのでは?というのを見かけてナルホドー?!となった。


(しかし詐欺師と男が整形で入れ替わっていて、ポップコーンバトルでは悪霊の方が騙されて男の顔になった詐欺師の方を殺してしまうの、超常現象起こせるくせして騙されるんだ!?物理で!?ってなった。けど古典の悪霊や怪異って結構物理のだまし討ちされてるから違和感意外と無いのがおもしろい)



圧倒的光属性泉ちゃんに加えてマリア(呪われた男の娘)の婚約者ロレンツォも明るくていい人で見ててほっこりでした。

マリアとロレンツォの出会いも幸福の呪い効果なんだろうけど、マリアの意志の強さとロレンツォの前向きさに幸せになれ~!って純粋に思えたのも良かったです。

小説版もパラパラ見たけど、途中から露伴先生も巻き込まれて呪われた男と先生で「どっちの幸福の呪いが強いかなバトル」が始まってて、そこに泉ちゃんも巻き込まれているのが露伴先生的に幸運カウントされてるっぽいのな…メリットが高い行動してくれるって認めてるんだな~


悪霊を謀った結果、呪いが更新されて「娘が最高の幸せを感じたときに最大の不幸が訪れる」となり、娘・マリアは呪いを恐れる父親からあらゆる「1番」を奪われていく…

ただ奪う/与えないのではなく、1番欲しいものは父親から与えられることはないけれど幸運の呪いによって何らかの方法で一旦はマリアは必ず手に入れる、それを見つけた父親が奪い捨てていく…という過程があるのがより残酷だなと思いました。


そんな人生の中「自分が納得のいく1番を作り出せる」「最高を決められるのは自分だけ」ということからマリアが仮面職人になるのが…マリア強いなぁって感心しました。

露伴先生はマリアの運命に諦めず抵抗する強さと、物作りへの姿勢にとても共感して今回手助けをしたんだろうなぁ。

幸運の呪いの端っこにより、何もしてないのに欧州で著書発行部数が凄まじいことになって「呪いで勝手に決めるなバカボケ!!」とばかりにブチ切れてた露伴先生すげ~~~~ってなった。泉ちゃんは呪いについて話に聞いていてもラッキー!で終わってたあたり、幸運も不幸も自分で決めるって人にはこの呪いは効果薄いんだろうな。まさに呪いらしい呪い。


最後、お芝居で呪いを騙して(まただまされてる…今回は露伴先生の能力込みだから予想は難しいか)マリアは呪いから脱却するんですが、そうだとわかる描写が「結婚式の指輪交換で指輪を落としてしまう」っていうの、かわいくて微笑ましくてにっこり。

ロレンツォが「マリアは本当に今日が最高に幸せだと思ったのかな」ってちょっと不安そうに言った(呪いがちゃんと解除されたかというのと自分との結婚で幸せを感じてくれたかの両方の不安があったと思われる)とき、泉ちゃんが「今が最高に幸せかなんてわかりませんよ。だって明日はもっと幸せなことがあるかもしれないですから」は、ハっとさせられました。日本語だけどロレンツォに伝わってるのがまた良かった。

露伴先生が泉ちゃんに「君を呪うのは至難の業だな」と言っていたのにはうなずくしかない(前作で呪いの黒い絵の本質を一発で見抜いて呪いスルーしてるんよ…)


そして、「最大の幸せが確定することはない」なら「最大の絶望も確定しない」。

最愛の娘を目の前で失い絶望を受けた男は「これで…助かった…」とうわごとのように呟いて教会を出ていき街中を彷徨う。

最大の絶望を受けたけど自死はしない。助かった…と言いながら生きていく。

生きている限り「最大の絶望も確定しない」ので、呪われた男は生きている限りずっと呪われる。それでも彼は生き続ける。

露伴先生は「幸運であれ不幸であれどんな形であっても運命に抵抗する人は尊敬する」的なこと言ってたけど、たぶんこの男も含まれてるんじゃないかな。


幸運も不運も誰のせいにもせず自分で決めて背負うのは真剣にやるとかなりキツい。

自分よりも大変そうな他人に対してすぐ「そうなったのはお前の自己責任だ」と責める人も多いけど、自己責任って言葉を軽く口に出す人ほど他責思考だったりっていうのあるあるですよねぇ…呪いの発端になった男と浮浪者のやり取りなんてその際たるものだし。


生きることそのものが呪いのように、次のまだ見ぬ「最高の幸せ」を求めて生き続けていくのも人間だよね!

後味が悪いようでいて、全体的に希望や人間賛歌を感じる終わりになっていました。

前作も良かったけど全体のイメージすっきり掴みやすいのは今作かな。どっちも良い!




(追記)

音楽全て生成AIを使って作成されたとのことで炎上?というか話題になってますね~

個人的には一番最初の「単体は穏やかなメロディーだけど合わさると不協和音になっている」BGMが印象に残っています。かなり不穏で好み。

他は特に…特別印象に残るものはないけど映像から浮くことはないって感じで特筆していい悪いは感じなかったかな。

これを「映画に馴染んでる」と捉えるか「観客の印象に残る音楽はまだAIには無理だったか」と捉えるかは見た人次第だと思います。

耳なじみが悪すぎて聞くに堪えん!ってものはなかったので、こだわりが無ければ映画はとってもおもしろかったので見た方がお得だと思います。


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